全国の国公立・私立の小中学校(総数:小学校約24000校、中学校11000校、体育館も含めるとこれらの約1.5倍=総数約5万棟)のうち、約1万棟の公立小中学校が耐震強度不足の恐れが高い(文科省公開)ことが21日新聞報道された。
国公立・私立の高校や大学にはこの数から除外されている。さらには乳幼児施設・児童施設、公立・私立病院や老人施設などまで含めればさらにその数は倍加する。
いくらこれらの耐震化を奨励してもボトルネックになる部分が出てきはしないかと懸念する。
それは先日もこのブログで書きましたが、『設備設計一級建築士の不足』なのである。
上述した大規模建築物の改修は構造的な改修設計もさることながら、設備(機械設備分野、電気設備分野)の改修設計も同時に行われることとなるのだが、『構造設計一級建築士』以上に『設備設計一級建築士』が絶対的に人員不足となる。
この種の規模の確認申請には『設備設計一級建築士』の設計関与が改正建築基準法によって絶対条件とされるわけで、改修工事も建築工事として規程されているので『設備設計一級建築士』は絶対条件。
(『設備設計一級建築士』の関与義務付けは平成21年5 月末以降の施行。建物規模:3階建て以上、かつ延べ床面積5000平方メートル以上建築物の設備設計について法制化。)
ただ、『設備設計一級建築士』はなにもこうした公的な建物だけを設計しているわけではなく、民間の大型マンションや大型ビル、大型工場などの新築、増改築にも必須資格者となるので、全国に約2000人(2008年度・小杉試算)という数では深刻な計画遅延や確認遅延や工事着手遅延が生じる。
この『遅延』は経済効果のマイナス・減衰を意味する。(現時点では、ここまで文科省も国交省も考えていない。)
なので、ますます景気は低迷することはいうまでもないが、文科省ももう少し国交省と連携をとって、国交省の法律の制定について注文を付けるべきと考える。
方策としては、耐震改修についての特例を設ける。
1.まず耐震化の優先順位として上位である公的、準公的なこうした建物の設備設計アドバイザーは一級建築士で対応する。
2.全体規模で網掛けをするのではなく、別棟での扱いにして該当床面積を下げる。
3.『設備設計一級建築士』の施行はもう少し段階的な運用とする。
これら方策をせずに新法で対応するならば、懸念材料はさらに増え、市場は混乱する。
もう少し言えば、『設備設計一級建築士』の多くは大手の建設会社の設備セクションに在籍しているので、ますます、大手の建設会社がこうした耐震改修市場を独占することが予測される。
これは弱小の企業からすれば危機である。弱小は食べていけなくなり、仕方なく大手の下(下請け)に入らねばならないからだ。
また、根本的な法改正の裏側をのぞけば、小規模の企業が成り立つ正当な競争社会は一変して、大手企業の独占的な舞台を構築すべく法改正を主導する政治家は描いている。
なぜならば、そこには政治献金が隠れているからである。
cosugi : 2008年06月20日 08:52